
こんにちは。エリーヌホームの伊藤甚宰です。
厳しい暑さもようやく峠を越えて、朝夕の風に少しだけ秋の気配が混じるようになりました。この時季になると、お客様との話題も夏の暑さ対策から「冬をどう過ごすか」へと移っていきます。そんななかで、ここ数年ずっと増え続けているのが「平屋を建てたいのですが」というご相談です。
以前は年配の方が建てるものという受け止め方が一般的でしたが、今は30代の子育て世代から60代のご夫婦まで、幅広い世代からお話をいただきます。今回は、雪の降るこの魚津で平屋を建てるとはどういうことなのか、良いところも気をつけるところも含めてお話しさせてください。


これは私の実感だけではありません。
国の建築着工統計をもとにした各種の集計では、新築住宅に占める平屋の割合はこの十数年でおおむね2倍近くにまで伸びたと報じられています。
着工戸数そのものが全国的に減っているなかで平屋だけが増えている。
これはなかなか珍しいことだと思います。
理由はひとつではないでしょう。
まず、暮らしの見通しやすさ。
生活の場がすべて同じ床の上にあれば、家族がどこにいるか気配で分かります。
小さなお子さんの声を、キッチンに立ちながら聞いていられる。
次に、家事の楽さ。
洗濯物を持って階段を上り下りする必要がなく、掃除機をかけるのも一続きです。日々のわずかな手間の差が、10年、20年となれば大きくなります。
そして3つめに、長い時間軸で家を考える方が増えました。
階段は年を重ねるほど負担になります。
2階を使わなくなり1階だけで暮らすようになったというお話は、お引き渡し後に長くお付き合いさせていただくなかで決して珍しくありません。
それならばはじめから、と考えるのは自然な流れなのだろうと思います。

ここからが、富山で平屋を建てる場合にいちばん大事なところです。
全国の平屋の記事を読んでも、この土地の話までは書いてありません。
まず申し上げたいのは、平屋の設計は「雪の行き先」を決めることから始まるということです。
平屋は建物の底面積が広いぶん屋根も広く、上に載る雪も落ちてくる雪も2階建てより多くなります。
構造の面では積雪荷重を見込んだ設計で対応しますので、そこはお客様にご心配いただく必要はありません。
一緒に考えたいのは、配置のほうです。
屋根から落ちた雪が、どこに積もるのか。
隣地の境界に近すぎないか。玄関の前やカーポート、給湯器の上ではないか。
平屋は建物の高さが低いぶん、落ちた雪が窓の高さまで届いてしまうことがあり、これは2階建てにはない注意点です。
そして、除雪の動線です。
冬の朝、家から出て車にたどり着くまでにどこをどれだけ除雪するのか。
図面の段階で1度、頭の中で歩いてみてください。
玄関からカーポートまでを数メートル縮められれば、毎冬何十回と繰り返される作業が軽くなります。
屋根の形も大切です。
雪を落とす形にするのか、載せたままにする形にするのか。どちらにも考え方があり、敷地の広さと隣地との関係で答えは変わります。
見た目だけで決めると冬に困ることがあります。
逆に、平屋には雪国ならではの良さもあります。
2階の窓がないぶん雪囲いの手間が減り、屋根に上がる作業も高さが低いぶん負担が違います。

よくいただくご質問です。答えを先に申し上げますと、構造的に有利な面はありますが、「平屋だから安全」ということではありません。
有利なのは重心の低さです。地震の揺れは高いところほど大きく振られます。2階の重みが一階の柱と壁にのしかかる2階建てに対し、平屋は上に載るものがなく、建物全体の重さも軽く済みます。とはいえ、強さを決めるのは建て方ではありません。耐力壁の量とバランス、基礎、そして敷地の地盤。この3つです。
特に平屋で気をつけたいのが、大きな開口部との付き合い方です。
庭と一続きになる開放的な間取りは平屋の魅力ですが、大きな窓を並べれば、そのぶん壁は減ります。
開放感と壁の量は設計上どうしても引っ張り合う関係にあり、ここを勘で決めず計算で確かめることが大切です。
地盤についても一言だけ。
魚津は片貝川や布施川が運んだ土砂でできた扇状地の上にあり、場所によって地盤の性格がずいぶん異なります。同じ町内でも敷地が違えば結果が変わることは珍しくありません。耐震の考え方そのものは以前の記事で詳しくお話ししておりますので、そちらもご覧ください。

これも正直にお話しします。
同じ延床面積で比べた場合、平屋は外に接する面が大きくなります。
屋根と床、つまり上下の面積が2階建ての倍近くになるからです。熱の出入りする窓口が多いということですから、断熱をおろそかにした平屋は、率直に申し上げて寒いです。
ただ、この話には続きがあります。
裏を返せば、平屋こそ断熱と気密の効き目がはっきり表れる建て方だということです。
屋根と床という大きな面をしっかり包んでしまえば、そのぶん改善の幅も大きい。
手がけた平屋にお住まいの方から「冬の朝の廊下が冷たくない」とお声をいただくのは、この理屈によるものだと思っています。
暖房の面でも有利な点があります。
2階建てでは暖めた空気が階段を通って上へ逃げていきますが、平屋にはその逃げ道がありませんから、1つの空調で家全体の温度を揃えやすい。屋根が広いぶん太陽光発電を載せる面積を確保しやすいことも強みです。つまり平屋は、断熱にきちんと投資する前提であれば光熱費の面で不利になるものではありません。ただし「安く建てて断熱はほどほどに」という平屋は、冬の富山ではおすすめできません。

「平屋は坪単価が高いと聞きました」。これも本当によくいただくご質問です。
結論から申し上げると、同じ延床面積なら坪単価は平屋のほうが上がりやすいのは事実です。30
坪の二階建てなら屋根と基礎はそれぞれ15坪分ですが、30坪の平屋なら30坪分が必要になるからです。
ただ、坪単価という1つの数字だけで判断してほしくないのです。
階段そのものとそのための面積、2階のトイレや洗面、2階へ配管を延ばす工事、足場の高さ。
これらが減るぶん、差はいくらか埋まります。
さらに大切なのが、そもそもの延床面積です。
実際に間取りを描いてみると「思ったより小さくてよかった」とおっしゃる方が多い。
廊下が減り、階段が消え、2階の使わない部屋がなくなるからです。35坪の2階建てで考えていた暮らしが30坪の平屋で成立してしまえば、総額の話はまったく変わってきます。
一方、正直に申し上げなければならないのは土地のことです。
平屋は建物が敷地に広く載りますから、同じ延床面積なら2階建てより広い土地が要ります。加えて駐車スペース、雪を寄せる余地、隣家との距離、建ぺい率の制限。
「この土地にこの平屋が本当に載るのか」は、お決めになる前に確かめていただきたいところです。買ってから載らなかったでは取り返しがつきませんので、気になる土地が見つかった段階で遠慮なくお声がけください。
簡単な配置の当たりを取らせていただきます。

この夏、住宅ローンの長期固定金利は上昇しました。
長期固定の代表であるフラット35は、2026年8月の水準が現行制度になってから最も高いところまで来たと報じられています。
変動金利についても、日本銀行の政策の動きを受けて、これまでのようにずっと低いままとは考えにくくなっています。こう申し上げると「では急いだほうがいいのですね」と受け取られる方がいらっしゃるのですが、私はそうは申しません。
急いで無理な計画を組むことのほうがよほど怖い。
大切なのは、金利が動く前提で、それでも返していける計画になっているかを確かめることです。
補助制度については、国の新築向け支援は住宅の省エネ性能を軸に組み立てられており、平屋か2階建てかは要件になっていません。
ただしこうした制度は予算の上限に達した時点で受付が終わるものが多く、年度の途中で締め切られることが実際にあります。
魚津市の独自制度も、対象区域や限度額、併用の可否が見直されることがあります。名称も要件も年度ごとに変わりますので、金額や締切をここで断定することはいたしません。
ご検討の時点で最新の公式の案内をご確認いただき、分かりにくければ一緒に確認いたします。
資金の話は、間取りの話と同じ机の上でしていただくのがいちばんです。
「土地はここ、建物はこれくらい、借入はこう」を一枚に並べて初めて、判断ができるようになります。

平屋は、暮らしのすべてが一続きの床の上にある家です。
家族の気配が近く、家事の動線が短く、年を重ねてからも無理がない。
その良さは、住まわれた方のお話を伺うほど確かなものだと感じています。
ただ、雪の降るこの土地で平屋を建てるには、屋根の形と雪の行き先、除雪の動線、そして断熱。
この3つを設計のはじめに据えておく必要があります。
ここを後回しにした平屋は冬に苦労しますが、逆に言えば、ここさえ丁寧に組み立てれば平屋は富山の暮らしにとてもよく合う建て方です。
迷っておられるなら、まずは実物をご覧になってみてください。
図面や写真では、天井の高さも、庭とのつながりも、冬の朝の空気も伝わりません。良いところも気をつけるところも両方お伝えしたうえで、ご一緒に考えさせていただきたいと思っております。
Q. 平屋は二階建てより高くつきますか?
A. 同じ延床面積で比べると、屋根と基礎の面積が広くなるぶん、坪あたりの単価は上がりやすい傾向があります。ただし階段や2階のトイレ・洗面が不要になること、延床面積そのものを見直せることもあり、総額では思ったほど差が出ないケースもあります。建て方だけで判断せず、ご計画中の間取りで比較なさってください。
Q. 雪の多い魚津で平屋を建てても大丈夫でしょうか?
A. 積雪を前提とした構造計算と、雪が落ちる先・積もる先まで見込んだ配置計画ができていれば問題ありません。屋根の形状と勾配、隣地や道路との距離、玄関やカーポートの位置、除雪の動線を設計段階から一緒に考えることが大切です。
Q. 平屋は二階建てより地震に強いのですか?
A. 重心が低く上階の重さがかからないぶん、構造的に有利な面があります。ただし「平屋だから安全」ということではなく、耐力壁の量とバランス、基礎、地盤の状態で強さは決まります。建て方に関係なく、根拠のある設計で確かめることが大事です。
Q. 平屋にはどのくらいの広さの土地が必要ですか?
A. 必要な建築面積に加えて、建ぺい率、駐車スペース、雪を寄せる余地、隣家との距離を見込む必要があります。同じ延床面積の2階建てより広い敷地が要るのは確かですが、必要量は用途地域や敷地の形で変わります。気になる土地があれば、購入前に配置の当たりを取ってみるのが確実です。
Q. 平屋でも補助金は使えますか?
A. 国の新築向け支援は住宅の省エネ性能などが基準になっており、平屋か2階建てかは要件ではありません。魚津市にも住宅取得を支援する制度がありますが、内容や金額、併用の可否は年度や認定時期で変わります。最新の条件は必ず公式の案内でご確認いただき、ご不安なら私どもでも一緒に確認いたします。
エリーヌホーム(伊藤建設株式会社)について
富山県魚津市を拠点に、注文住宅の設計・施工を手がけています。魚津・黒部・富山・滑川・入善・上市・立山・朝日など、富山県内を施工エリアとしています。雪と湿気のあるこの土地で、長く心地よく暮らしていただける家づくりを心がけております。
私たちの4つの強み
平屋のこと、まずは気軽にご相談ください
「うちの土地に平屋は載るだろうか」「予算はどれくらい見ておけばいいか」。
そんな段階のご相談こそ、お役に立てることが多いと思っております。
